最後は旦那さんの暴走で終わった浮気調査

依頼者は結婚20年目を迎える40代の男性。2人の子供がおり、すでに成人を迎えるまでになり手がかからなくなった時期。
奥さんとの夫婦関係は良好だったものの、子供が高校生になり成長した頃から旦那さんへの態度が変わってきたといいます。
依頼者の旦那さんは会社員で、製造業務に従事しており、役職もついて帰宅が遅くなっていたとのこと。
奥さんも数年前から知り合いの鍼灸整骨院の医療事務パートに出ていて、夫婦共働きの状態だったようです。
1年ほど前から、子供の成長とともに奥さんも仕事に時間を割くようになり、お互いが忙しくなってミュニケーションが希薄になってきたとのこと。
時間のすれ違いが多くなってくると夫婦関係にも影響が出始め、次第に会話が少なくなってきた様子。
そんな中、奥さんが「仕事の送別会で遅くなる」「職場の友人との飲み会で遅くなる」と言っては、外出することが多くなってきたそうです。
旦那さんが浮気を疑ったのは、奥さんの話が事実と異なることがわかったからでした。
「会社の人と飲み会」と言ってからしばらくして、知人から「奥さんの会社でその日に飲み会などはない」と伝えられたとのこと。
その後、奥さんの様子を見ていると、休日になれば何かと理由をつけて家を空けどこかへ行くようになったそうです。
完全に浮気を疑った旦那さんは、それとなく休日の様子をうかがって「どこへ行ったか」「何をしたか」などを具体的に聞きました。
すると、その回答とは違った事実を証明する証拠が出てきたようです。
「職場の友人と○○へ行って食事していた」と言った日時に、県外にあるレストランで食事をしたレシートが出てきました。
レシートに記載されている店の住所地、会計の時間などを見ると、普段ならまったく用のない場所だったことが判明。
県外の店の付近には知人や親せきなどいるはずがなく、そこまで行って職場の友人と会うような必要はないと判断。浮気を疑って、探偵事務所のドアを叩いたという流れです。
『調査内容』

旦那さんは調査員の説明を受けてすぐに契約書に同意、浮気調査が始まりました。
まずは旦那さんから奥さんに関する情報を受け取り、今後、奥さんが何らかのアクションを起こした時点で連絡をもらうよう指示。
旦那さんは浮気が発覚した場合は離婚も視野に入れて調査を依頼してきました。
そのため、これまでの夫婦関係を示す材料として会話を記録したり、今後の法的な証拠となるような会話を録るためにボイスレコーダーを設置。
自宅内での奥さんの会話の内容を調べることにしたようです。すると、依頼から10日が経過したころに、旦那さんから連絡が入りました。
奥さんが週末に旧知の友人と会うために、実家に近いところに行き、その友人と会って泊まってくるといったそうです。
しかし、旦那さんへの話とは違った会話の内容がボイスレコーダーに入っていたため、その会話の先に浮気相手がいると判断。
週末の本当の行動は、レシートに記載のあった県外の某レストランにもう一度行く、というような内容だったそうです。
すぐに調査員は週末に向けて準備を開始。県外のレストランの場所などを確認、そこへ至るルートなども調べ、追跡できるよう準備を整えました。
徒歩版と車両版に分かれ奥さんを追跡
奥さんは金曜日の夜に出かける準備をしていたため、追跡は夜から始めることに。自宅を出た奥さんはタクシーで駅に向かい、そのまま電車に乗る素振りを見せました。
しかし、駅の構内に一度入ったのち10分ほどしてから出てきて、タクシープール付近で立っていると、そこに来た車に乗り込んで駅から出ていきました。
あらかじめ調査員は徒歩班と車両班に分かれていたので、その後は車両班が追跡。奥さんを乗せた車は市街地から出ていき、高速道路に入って県外へ向かっていくのがわかりました。
時刻は21:00ころだったので、夜間の高速道路での追跡となりました。
その後、1時間ほどして2人を乗せた車は隣県のインターで降りていきました。そして、インター付近のラブホテルに入るところを確認。
ここで、初めて車内にいる2人の様子をカメラでとらえることができました。ホテルの駐車場に入ってからしばらく車内にいた2人。
運転席には40代と思われる細身の男性が載っていて、助手席には奥さんの姿が。その後、カメラを回し続け、2人が車から降りてホテルに入るまでの一部始終をとらえることに成功しました。
決定的証拠を抑えるため夜通しで張り込み
奥さんと一緒にいる男性が浮気相手であることはほぼ濃厚。その後は調査員の粘りの時間帯となり、2人が出てくるまでは不眠で張り込みを続ける必要が出てきました。
結果として、翌日の朝9:00にチェックアウトした2人は、再び車に乗り込み、ホテルを出ていきました。
これで浮気の確たる証拠を撮ることができたため、あとは追跡して2人の1日の様子を確認することにしました。
午前10:00頃には県内を通る国道を走り、とある小さな電気店に入ったことを確認。
依頼者の旦那さんには随時報告をしていましたが、その様子を話すと、ボイスレコーダーに入っていた会話の内容と一致。
浮気相手である男性の趣味で、「無線を扱う店に行く」ということがわかったのです。
そして、1時間ほどしてから再び車に乗ると、予定していた某レストランに入店。そこで食事をしてから、2人で日帰りの温泉に入って行く様子が確認できました。
2人の1日の様子を完全に撮影したところで、夕方になり旦那さんに再度報告。
すると、旦那さんは浮気相手のことも調べてほしいと申し出たため、奥さんと相手が駅で別れてから追跡調査を続けました。
浮気相手は駅から20分ほどしたところにあるアパートに入り、部屋に入るところまでがわかりました。
旦那さんにその事実を告げて、この日は調査を終了、その後の調査をどうするかなどは依頼者の判断に委ねることにしました。
依頼者が暴走!法的に完全アウトな行為に

完全な浮気の証拠をとれた依頼者は、離婚および相手への慰謝料請求の準備を進めていたようです。
弁護士にも相談に行ったようですが、その際に、慰謝料などは相手の年収や会社内での立場に影響すると言われとのこと。
当然、高収入を得ていれば、それだけ慰謝料の請求金額に関わってきます。
このとき、依頼者の旦那さんは胸の内で怒りを爆発させている状態でした。どの依頼者もそうですが、浮気のデータを直接目にしたとき、その感情を爆発させる方がいます。
奥さんが夫婦間の契約を破ったとはいえ、旦那さんはあくまで法的に冷静に対処しなければいけません。
そのために探偵事務所の調査員がおり、調査をしてアドバイスする必要があるのです。
こういったことは、契約の時点できちんと説明しており、「感情的にならないよう対処してください」「法的に戦略を練って対応する必要があります」とアドバイスしています。
しかし、旦那さんの怒りは頂点に達していたようです。
無理もありませんが、浮気相手とラブホテルに出入りし、さらに、車内で軽くキスする様子を映像として見た旦那さんは、あらゆる感情がないまぜになっていたようです。
旦那さんがとった行為の内容とは
調査からしばらくして旦那さんから電話があり、ある事実を告げられました。
それは、「相手に慰謝料を請求したいから、相手の年収なども知りたい。だから、相手のアパートに行って、部屋に入って預金通帳などを調べた」というのです。
この瞬間、調査員はそれが違法行為だと判断。依頼者である旦那さんにクレームを入れ、それがどれだけ重大なことで、契約違反に当たるかを伝えました。
会話の内容からわかるとおり、旦那さんがとった行動は、見知らぬ相手の部屋に勝手に入りこんで、部屋の中のものを物色するという犯罪行為です。
何も取らなかった、部屋の中のものを見たということでしたが、この証言が本当か嘘かは調査員が知るところではありません。
また、この行為そのものもあくまで旦那さんの証言なので、本当かどうかはわかりません。
ただ、犯罪行為に当たる行動をした依頼者に対して、探偵事務所として契約を結び続けることはできないため、旦那さんに即刻、契約解除の旨を告げました。
旦那さんは謝罪してきましたが、その行為は探偵事務所と依頼者の信頼関係を破ることです。
何のために探偵に依頼しているのか
契約書に従って、違法行為に至った場合は、データを返還させるとともに、事務所側も調査料金の一切を返還、行為の責任は依頼者がすべてとるということで同意を頂きました。
これにより、依頼者の旦那さんは浮気調査による結果を失うことになり、その後は探偵事務所も夫婦の関係を追及しませんでした。
契約は重要なことであり、探偵事務所もお互いの信頼関係により成り立っています。浮気の事実を目にしたところで、感情的になってすべてを台無しにする行動は慎むべきでしょう。
これは、かなり極端なケースですが、依頼者が感情的になり、犯罪行為(住居侵入や器物損壊など)に至ることがあります。
浮気で相手に慰謝料を請求するどころか、自分が犯罪者となって刑事罰を受けるといった愚かな行為がないよう、冷静に行動することが大切です。