幸せな熟年夫婦に何が起こったのか
依頼者は、結婚25年目を迎えた50代の女性でした。
夫婦のあいだには2人の子供がいるものの、すでに成人になって家を出ているため、現在は夫と2人で生活している状態。
夫婦ともに仕事を持っているので、これまで懸命に子育てをして家族のために働いてきた、一般的な夫婦だったそうです。
夫婦関係が崩れていたわけではなく、仲が悪いわけでもなかったのに、奥様が探偵事務所に旦那さんの浮気調査を依頼してきました。
奥様は旦那さんの行動のおかしな点に気付き、パニックになっており、現状をどうすればよいかわからない様子でした。
自身も仕事を抱えながら、家庭内のトラブルに混乱していたようです。
面談したときの話では、旦那さんの仕事の帰りが遅く、残業といっては夜10時〜12時に帰宅することが多くなっているとのこと。
旦那さんは地元の企業に勤める会社役員で、従業員200人ほどの工場の責任者を務めていました。
役員ということもあり給料も高く、現在は工場の責任者として経営を任される立場にある状態でした。
夫の不審な行動が目立ちはじめる
これまでの安定した生活が一変したのは、2か月ほど前から。
会社の繁忙期でもないのに、残業が続いて帰宅が遅くなり、休日も仕事、平日も出張が重なって家にはただ帰ってきて寝るというだけの状態。
奥様はそれとなく旦那さんに会社の様子を聞いてみたものの、「今は生産ラインが急激に増えて忙しくなってきている。」というような回答ばかり。
仕事で忙しいのはこれまでもあったことで、ここ2か月間は奥様に対する態度もよそよそしくなっていたことから、いわゆる女のカンで浮気を疑ったそうです。
夫婦として寄り添ってきた奥様が浮気を疑ったとき、その予感が的中する確率は90%といわれています。
長年の仮面夫婦ならまだしも、それまで仲睦まじかった夫婦ほど、浮気による態度や生活習慣のギャップが大きくなるのである意味わかりやすいともいえます。
今回の依頼も、結果的にはその予感が的中し、浮気が発覚したケースでした。
そして浮気調査がはじまる
まずは依頼者である奥様から、旦那さんに関する情報をすべて提供してもらうことから調査が始まります。
旦那さんの氏名はもちろん、顔写真や勤務場所、会社の名前、車のナンバーなどなど。
これらの情報をもって旦那さんを特定し、仕事が終わる夕方6時に会社付近で待機し、旦那さんの行動を追跡していきました。
まずは会社の付近を検索して、旦那さんの車が会社の敷地内にあるかどうかを確認。
ナンバーから、駐車場に停めてある車が旦那さんのものであることがわかりました。
関係者以外は会社の敷地内に立ち入ることはできないため、100mほど離れた場所から、双眼鏡で車の位置を確かめました。
その後、監視を続けていると、調査対象者の旦那さんらしき人物が車のドアを開けて中に乗り、エンジンをかけたことを確認。
時刻は午後6時18分。
あらかじめ、奥様が旦那さんに対して「今日も帰りが遅いの?」と聞いておいたところ、「繁忙期なので夜11時すぎる」との回答を得ていました。
これで旦那さんが嘘をついていることがわかり、追跡すれば何らかのアクションがあることが予想できました。
すでに2名の男性調査員が出動しており、1台の車で追跡。
旦那さんが車を動かすところから、会社の門を出て社外へ出ていく様子を望遠カメラで撮影していました。
その後、旦那さんは会社を出てから15分ほど車を走らせ、近くの工場跡地に駐車。
そこは人気のない場所で、周囲は背の高い草木に覆われているため、普段なら誰も車を停めるような場所ではありません。
残業であれば、一旦夕食をとるために近くのレストランに立ち寄ったりする可能性もあります。
しかし、周辺の状況からその可能性は消え、人気のない場所に「立ち寄らなければならない理由」があるということがわかりました。
そして、その結果は15分後に表れます。
1台の軽自動車が旦那さんの車の隣りに横付けされ、中から若い女性が出てくる様子が確認されました。
その女性は旦那さんの車に乗り込み、その後、約1時間半にわたって出てくることはありませんでした。
いったい車内で何をしていたのか?
奥様にとってはつらい事実ですが、不貞行為に浸っていることは容易に想像がつきます。
その瞬間を撮影する
調査員はすぐに2人の車の位置を撮影できる場所を探すため、車外に出て周辺を検索。
カメラを抱えた状態で、2人に気付かれないように廃工場の中に入り、車を撮影できるポイントを押さえました。
カメラから車までの距離は約30メートル。
夜7時近いこともあり、通常の撮影では露光が不足していて、車のナンバーはおろか、中にいる2人の状態を確認することはできません。
そこで、赤外線を照射してカメラを構え、夜間撮影に切り替えました。
すると、車の中にいる2人の表情までがハッキリとうつり、1人が旦那さんであり、もう1人が20代の若い女性であることがわかりました。
そして、撮影開始からわずか10分で、浮気の証拠が決定的となるシーンを撮影することに成功しました。
赤外線の中に映った2人が、車内でキスをしている様子がカメラに映り、その後、旦那さんが女性の上着を脱がせる様子も確認できました。
ときおり、2人がイスにもたれて姿を消すものの、その後の撮影で2人が裸になっているのがわかりました。
このことから、2人が不倫関係にあること、すでに肉体関係をもっていることがハッキリとわかります。
ここまであからさまな状況だと、裁判上の離婚理由にあたる「配偶者に不貞行為があったとき」を裏付ける十分な証拠が撮れたといってよいでしょう。
決定的証拠が離婚の決め手に
1回目の浮気調査で、すぐに「不貞の証拠」がとれてしまうケースは少ないといえます。
しかし、2人があまりにも無防備で警戒心がない状態であれば、このように、調査から証拠の撮影に直結することもあります。
撮影したデータはすべて奥様に提出し、それをもって奥様は弁護士に相談に行きました。
証拠としては十分であり、あとは旦那さんのメールやスマホの履歴に残った通話相手の記録をとっておくことで浮気を確定的なものにできるとのことでした。
普通なら、浮気をしていれば警戒心があるため、浮気相手との通話の履歴やメールでのやりとりは消去しておくはず。
しかし、旦那さんはある理由のためにこれらのデータをすべて残しておいたのです。
旦那さんは50代の中年の男性。
会社や家庭のために時間と労力を費やし、長いあいだロマンスとはかけ離れた生活を送ってきました。
そこに、会社に入って来た若い女性と意気投合してしまい、恋に落ちてしまったようです。
突然のロマンスに我を忘れた旦那さんは、「恋の記念、恋の思い出」として若い女性との通話やメールをすべて残していたそうです。
慰謝料と共有財産の行方は
その後、奥様は旦那さんと相手の女性に対して慰謝料を請求。
旦那さんから260万円、女性からは100万円の慰謝料をとることができたそうです。
間もなく離婚も成立しましたが、夫婦の共有財産があり、預貯金は等分し、住宅ローンについては旦那さんが全額負担することで解決。
また、パートで働いていた奥様は生活力がないという理由から、今後の生活費として毎月8万円を受け取ることで話がつきました。
離婚も成立し、奥様は家庭内のトラブルに一応の決着をみるこができました。
しかし、問題になったのは旦那さんと女性のほうで、会社に対して2人が不倫関係にあったことがバレてしまったため、結果的に女性のほうが退職することになりました。
1度の浮気、1度のロマンスが2人に大きな社会的ダメージを与える結果になったのです。
関連ページ